2017.05.24 加藤清正歴史研究会
加藤忠廣「塵躰和歌集」全訳(7)英数研究セミナー加藤敦
27.さくら花わかなとひとつ手にふれて 匂いもまさる人のおいらく
(釈)櫻と若菜を一緒に手に触れてみると、年かさの方がやはり花の香りがいっそう華やかだ。
*櫻は法乗院、わかなは亀姫を指す。
28.萬代にちぎりもふかくこうばしき 人の心も花にぞありける
(釈)夫婦の永遠の契りを誓ったわがつま法乗院の心も、この櫻の花の中に宿っている。
*「こうばしき人」は法乗院を指して使われている。正しくは「かうばしき人」であろう。忠廣公は、いわゆる「歴史的仮名遣い」をかなり誤用し、結果的に「新仮名遣い」に一致しています。現代の仮名遣いと同じなので、私はあえて直さずに記述している。
同八日
29.きのう見し人はわかなかはつ春の 玉のをながき青柳のいと
(釈)きのうの夜の夢に見たのは若菜だったのか、ながく美しい青柳の糸のように美しく長く生きてほしい。
*わかなは亀姫、「玉のを」は、魂の緒から「命」を意味すると考えられる。
同九日
30.こゝのヘににしきをかざすいと櫻 花の盛りに歸さの袖
(釈)幾重にも金襴の錦のようなあでやかに咲きほこるいと櫻 花見の帰りの若い女たちの振袖
*忠廣公の歌に、袖が頻出している、「袖がぬれる」で涙にくれるとなりますが、ここの袖は涙ではなく、「女たち」と考えて訳した。
寛永十癸(みずのと)酉(とり)年正月十日の哥
31.なよたけのふたよをこめてちぎりしは ふしぶしならぬ中かと見る哉
(釈)まだ若いなよ竹のころ、この世とあの世とを込めて永遠の愛を誓った妻とは、形式ではなく、真実の愛だったのだね。
忠廣解説
同八日九日、美しい花を見て、このように思い続け書きつけた。
*やはり忠廣公は、崇法院でなく、法乗院のことを深く愛していたようだ。